町の診療所、役場の保健部門に加え、地域交流の拠点となる複合施設です。美波町は徳島県南の太平洋沿岸部、人口7000人ほどの小さな町。古い町並みが残り、海、川、山に囲まれた非常に美しい町であるが、大地震発災時には津波の浸水被害が想定されている地域です。
避けることのできない津波への対応として、建物の主要機能を2階以上に持ち上げ、1階にできる大きなピロティ空間を地域の人たちが自由に留まり、通り抜けられる公園の一部として開放しました。ピロティは大屋根のかかった半外部空間として夏の強力な日差しを遮り、散歩の休憩や送迎の待合として利用されるだけでなく、地域のイベントや活動に活用できるように設えています。
東日本大震災以降に再検討された津波被害シミュレーションにより、各地で被害想定が大幅に書き替えられました。そのような場所で建築をつくるという、大きなジレンマにむかいながら、津波に対抗するというネガティブな条件を穏やかで開放的な公共空間に転換し、事前復興の一つのモデルとなるような建築を目指しました。